「歯根破折」(しこんはせつ)について
日本人の「抜歯の原因」第3位は「破折」
歯根破折の主な「原因」について
歯根破折には様々な原因がありますが、よくあるものを3つあげると「歯の神経を取った」「金属の土台を差した」「ブラキシズム(はぎしりなどがある)」があります。
歯根破折の主な原因3つ
①歯の神経を取った ②金属の土台を差した ③ブラキシズム(はぎしりなどがある)
歯根破折の主な「症状」
歯根破折を起こしてしまった場合、むし歯のように大きな痛みが出ることは少ない特徴があります。そのため注意が必要です。
歯根破折を起こしている場合のよくある症状
1.差し歯がとれる
被せ物とコア(土台)の部分が一緒に外れてくることが多いです。
2.痛みが無い(少ない)ことが多い
神経を除去している歯牙では破折しただけでは痛みが無い事が多いです。
3.歯肉の一部が腫れている
破折部では細菌が増殖しやすいため、局所的な歯周炎を発症してしまいます。
4.「パキッ」と音がした
噛みしめた時などに歯にパキッという音がした場合。
5.1本の歯だけが動く
1本の歯だけが動くといった場合には歯周病よりも破折の可能性が高いです。
①神経を取った歯(失活歯)は脆く歯根破折が起こりやすい
歯根破折は、神経のある歯よりも神経を取る治療(抜髄)をした歯(失活歯)に起こりやすい傾向があります。失活歯は、例えば、樹木で例えるなら「枯れ木」です。生きている木は、水分を吸って、しなやかさもあり、そう簡単には折れません。しかし枯れ木になると、水分も無くなり、同時にしなやかさも失い、折れやすくなってしまいます。同様に歯も神経や血管の通っている部分(歯髄)をとってしまうと、まるで枯れ木のように折れたり割れたりしやすくなってしまいます。そのため神経のある歯と比べて断然、破折を起こしやすいのです。
生きている木はしなやかさがある
枯れ木は乾燥し折れたり割れたりしやすい
症例紹介
歯根破折の起きやすいケース①・・・「失活歯(神経を取った歯)」
むし歯が大きい場合、除痛のために歯髄を取る処置を行うことが多いですが、歯髄をとると歯自体がだんだん脆くなっていきます。脆くなった歯に大きな力が加わると、ちょうど竹を割ったように歯根破折が起きてしまいます。当院では、歯根破折の約90%が失活歯によるものです。
上の写真は40代女性。左下第二小臼歯の歯根破折がありました。ちょうど力のかかりやすい臼歯部が失活歯となっており、歯根破折が認められました。この症例の場合、破折を起こした歯に被せ物が装着されていない事も原因の可能性があります。
②「金属の土台(メタルコア)」を差している歯には歯根破折が起こりやすい
さらに抜髄した歯は、被せ物をするために土台(コア)を歯の根の部分に差し込んで立てます。一般的に保険の治療では、広く金属の土台が使用されてきました。金属の土台のことを「メタルコア」といいます。このメタルコアは金属ですので非常に丈夫なのですが、枯れ木のようになった歯根部分には脅威になることあがります。強い力がかかるとまるで「くさび」のような働きをして、歯根を割ってしまうのです。
症例紹介
歯根破折の起きやすいケース②・・・「金属の土台(メタルコア)を差している歯」
金属の土台を使用する場合、作製上たくさんの歯牙を削る必要があり、その土台がくさびの仕組みにより、歯根に大きな負荷がかかってしまうことがあります。当院では、約75%がメタルコアあるいは金属性のポストが使用されていました。
上の写真は50代男性です。左上第二小臼歯の歯根破折を起こしていました。接合部を切断すると、メタルコアと、装着された被せ物が一緒に外れてきました。
③「ブラキシズム」歯ぎしりや噛む力の強い人には歯根破折が起こりやすい
歯ぎしりや、食いしばり、また噛む力の強い方にも歯根破折は起こりやすい傾向があります。歯ぎしりなどでは、健康な歯もすり減ってしまうほどの力がかかります。またTCH(歯列接触癖)といい、歯と歯を咬み合わせている時間の長い方も、無理な力がかかっています。さらに神経を取った失活歯がある、金属の土台であるメタルコアを差している歯があるといったケースでは特に注意が必要です。
症例紹介
歯根破折の起きやすいケース③・・・「歯ぎしりやくいしばり、噛む力の強い方」
物を噛むという力というよりは、食いしばりや歯ぎしりなど、無意識での咬合力によるものが大きいと思われます。また奥歯のみで咬んでいるなどの咬み合わせが悪い不正咬合の方もリスクが高いと思われます。また、傾向として、しっかり咬める歯で歯根破折が起きてしまうことが多いので、歯がぐらつきやすい歯周病の状態よりも、歯がしっかりしている虫歯の方が歯根破折は起きやすいと思われます。
50代男性。起床時に詰め物がとれた。近医にて破折が確認された。