破折歯接着治療の症例

当院の治療データ

当院での自家歯牙移植と歯牙再植の成功率と(歯の)生存率は、以下のようになっておりますやはり自家歯牙移植の(歯の)生存率は極めて高いですが、破折歯接着治療における意図的再植と自家歯牙移植の場合とを比較しても、大きな開きが無いことがわかります。もちろん個人差はありますが、このデータは破折歯接着治療の成功率として一つの参考にはなるかと思います。

成功率(%)
2年機能率(%)
5年機能率(%)
自家歯牙移植
100%
(15/15)
100%
(15/15)
100%
(15/15)
歯牙再植(垂直性歯根破折)
96.8%
(92/95)
94.7%
(90/95)
85.3%
(81/95)
  • 自家歯牙移植:歯が抜けたところに、自身の親知らずなどを移植する方法。
  • 歯牙再植(破折歯接着治療のための意図的再植):治療のため戦略的に一度抜いて再植する方法。

非抜歯で行う口腔内接着法の症例

主に、破折による歯根の分割が無い場合に適応されます。歯牙の喪失のリスクが少ないですが、口腔内で処置を行うため破折部の接着操作が困難である場合があります。

口腔内接着法 症例①

50代男性。右上第一小臼歯に破切を認める。破切した部位に接着材を流し込み治療を行った。

口腔内接着法 症例②

この症例では、特に痛みは無く、おおきな炎症は認めませんが、矢印で示した部位に破折線が認められます。他院では抜歯してインプラントを勧められましたが、保存を希望され来院されました。炎症症状が小さい事や、破折した歯牙が分離していないため、口腔内接着法による治療を行いました。

矢印の部位に破折線が認められる。
X線写真。判別しづらいが、破折線を認める。また根尖病巣も認められる。
口腔内写真。破折部と歯根周囲の炎症が消退していることを確認する。
スーパーボンドにて接着。ファイバーポストを用いて、土台を作製した。
被せ物を装着。経過は良好。

口腔内接着法 症例③

40代男性。右下5番歯根破折の保存を希望に来院。

歯根が完全に離断し、骨吸収も認められる。

抜歯再植後。骨吸収は改善し、歯周状態は安定。遠心のPDは5㎜。(PDは歯周病の進行度)


一度抜歯して口腔外接着による再植法

破折により歯根が二つに分割されている場合が主な適応。一度破折した歯牙を抜歯して口腔外で接着操作を行い、修復した歯牙を再び抜いた部位に戻します。(再植)完全に分断されていても処置が可能であり、適切な接着操作が行えますが、再植した歯牙が正着しない可能性があります。(その場合は抜歯となってしまいます。)

口腔外接着再植法 症例①

歯根破折を起こした歯。垂直に根尖部まで亀裂が入っている。
40代男性。右上第一小臼歯の違和感で来院。
該当歯を抜歯後、内部を清掃・消毒を行う。スーパーボンドにて接着を行う。

口腔外接着再植法 症例②

こちらは、左上第一小臼歯が齲蝕と咬合圧による歯根破折で被せ物が取れてしまった症例です。破折後、やや時間が経過していまい、歯根が完全に分離しているため、一度抜歯をして、修復し再植を行うこととしました。

口腔内写真。歯根が完全に分断してしまっている。
X線画像より、大きな齲蝕と斜めに破折が認められる。
口の外で精密に修復を行うため、抜歯を行った。

口腔外接着再植法 症例③

抜歯した歯牙の齲蝕部位を除去し、スーパーボンドにて接着し、歯周組織再生材料(エムドゲイン)と一緒に元の位置に再植を行いました。

齲蝕を取り除き、接着のための表面処理を行う。
スーパーボンドにて接着。歯根に歯根膜の残存を認める。
ナイロン糸とレジンにて固定。

口腔外接着再植法 症例④

再植した歯牙が安定した後、支台を調整し咬み合わせを考慮した被せ物を作製致します。今回は患者さんと相談し、できるだけ周りの歯を触らずに被せ物を作製しました。

約2か月後、仮歯を装着・調整しながら経過観察を行う。
再植した歯牙が十分に骨と正着している。吸収も認めない。
全体的な咬み合わせを鑑みて、上部の被せ物を作製した。

口腔外接着再植法 症例⑤

60代男性。右上7番口蓋部の腫脹があり来院。検査の結果、破折していることがわかり、意図的再植を行った。6か月後は失われていた骨の回復も認められた症例。

  
頬舌方向に破折船が認められる。

根尖周囲の顕著な骨吸収による透過像が認められる。

縦方向に破折線と骨吸収による透過像が認めらる。

「エムドゲイン®」と併用し、再植。
再植後6ヶ月、骨吸収部位の回復を認める。